全国港湾は国際貿易の海陸一貫輸送をになう産業別労働組合

委員長挨拶

 ご あ い さ つ

2023年10月吉日

委員長写真  中央執行委員会を代表して一言ご挨拶を申し上げます。本日の今日明日の大会にはご来賓として また、お忙しい中、糸谷顧問、柏木顧問に本大会に駆けつけて頂きました。誠にありがとうございます。是非とも今日明日の活発な議論の中にご参加いただきたいと存じます。

 まず最初に9月6日に今年度の中央港湾団交が妥結に至りました。2年連続で中央港湾団交が夏以降迄延びたことに関してはこの場を借りてお詫び申し上げたい。しかし、私たち港湾産業、港湾事業、港湾労働者を取り巻く環境は圧倒的多数の中小企業で占められていることであります。そういった中小企業で構成されている全国港湾、賃金労働条件を担保するには、検証作業は必要な取り組みであると認識しております。しかし、港湾春闘、春闘と呼ばれるからには今日の解決は遅すぎる。そういった声も意見も上がっているのも事実です。これはどんなに頑張っても私たち労働組合だけでは解決できない、私たち組合の責任ももちろんありますが、業界団体の責任でもあると私は感じております。労使双方が一緒になって荷主、船会社、膨大な利益を抱えている荷主団体と一緒になって問題を検証していかなければならない、そういった課題があると私は感じております。

 今大会の新しい運動方針案、来年の中央委員会でも慎重に議論しなければならないという風に思っておりますが、先ほど申し上げたように検証作業、これだけ多くの中小企業が集まっている中で春闘期間中に決着をつけるのは無理があると私は認識しております。よって各労働組合の賃上げ解決を最優先と掲げながら、料金担保の検証も必要です。これを通年的な取り組みとして続けていきたい。国交省、厚労省、荷主団体含め業界団体に対し適正な料金を港湾事業者に支払い、適正料金収受を早めに実現させることをかなえたいと考えております。

 次に中央港湾団交解決後の闘争体制確立の問題があります。実質的に全国港湾50年を迎える中にあって、中央港湾団交解決後に仮に協定に齟齬があった場合、闘争体制を再構築することは極めて困難な作業であります。一般的に労使がお互いに歩み寄って確認された協定、これは非常に崇高なものがあって、協定不履行などはあってはならない。そして絶対に許してはならない。しかし解釈の違いなどによって妥結後、各種専門委員会で協議が進展しないという問題も多々あろうことかと思います。当然、これからもそういった状況が想像される、よって全国港湾は新たな方針として、春闘といわれるからには早期の解決を目指す、遅くとも中小企業が纏まるような段階、大手の春闘が解決され、その後に私たち中小の解決へ繋がっていくと考えております。そういった意味では中央港湾団交は中小の期間中の解決を何とか目指したい、そして中央港湾団交解決後に闘争体制を解かなければなりません。しかし先ほど述べたように検証作業や各種専門委員会の協議を前進させることは極めて困難であると認識しております。そのためには春闘解決後の万が一の対策として年間スト権を担保に慎重に進めていくことについて今大会にて皆さんと慎重に議論していきたいと考えております。

 今回の中央港湾団交にて唯一よかったと思うことは港を兵站基地にするな、という思いを日港協役員も崇高な理念として受け止めて頂いていることです。私たちの職場、港湾はかつて国家総動員体制を基に、労働強化を強いられて最前線の兵站基地として港湾がみなされ、戦争の協力者と位置付けられた苦い経験がございます。日本国民がほとんど知らされていない、深く追及もされていない驚くべき事実として、日米新ガイドラインにおいては簡単に言うと、アメリカがいざ戦争になった場合、日本の港湾労働者の能力を適切に活用していきましょうと記されております。このことは半強制的に徴用されるものと危惧される事実であります。私たち労働組合幹部は少なくとも過去の歴史を繰り返してはいけない、このことを信念として持たなければならないと感じております、そうした中、毎月2回東京の新橋駅前で委員長代行を中心に「日本の港を兵站基地にしてはいけない」と街頭宣伝活動を続けております。少しずつ、理解されております。この理念は業界団体としても異論の余地はないと、議事確認したことは歴史的な大きな事実であると私は認識しております。

 今多くの業界が働き手不足、労働者不足にもがいております、港湾も例外ではありません。むしろ港湾労働者は深刻な事態になっているという風に感じております。いかに港湾労働者が努力して港湾労働の魅力を発信するかにかかっております。当然のことながら、今の若者は賃金だけでは入ってきません。多少の賃金優遇があっても見向きもされない。先般ILWUでは労使協定で妥結され、平均年俸の19%引き上げを行いました。平均1700万円の年俸となります。これは港湾労働者の平均値です。彼らはほとんど残業しません。日本も賃上げが必要ですが、日本国内にて港湾労働者だけが一気に賃金が跳ね上がるか、高収入となるか疑問がつきます。日本の産業構造にも大きな問題があるのは事実です。

 産別賃金制度は非常に重要です。港湾労働者の労働条件、あるいは休日休暇も並行して重点を置くべきと認識しております。港湾に限らず、運輸業を含めたサ‐ビス業も多々存在しております。今安易に機械化、自動化に頼ることなく基準内賃金で暮らせるような給与体系、そして土日祝日ある程度休めるような勤務ロ-テ-ションなど労使が今一度考え直す時期にあると考えておりますし、直近の課題と感じております。この為には料金収受をいかに適正に行うか、今労使の検証委員会が立ち上がりました。私は全国港湾としても一番重要な委員会であると認識しております。この委員会において、私は労使の利害関係は発生しないと考えております。これからの料金収受をいかに労使でタッグを組んで取り組んでいくのか、最終的には国土交通省等も巻き込んで本音の議論をしなければならないと考えております。

 AIターミナル、機械化、遠隔操作について考えを述べさせていただきます。先般二ュ―ジ-ランドのオークランド港において、自動化が大失敗に終わり撤退しました。原因を現在著書で熟読中でありますので詳細は後日発表できる見込みですが、書いてある内容は当たり前のことですが、安全性を重視すれば作業効率は落ちる、人の力では微妙なバランスはとれるが機械ではそれが無理だということが証明されました。実際にニュ―ジーランドの現地では能率を優先するがあまり、多くの事故が発生し撤退を余儀なくされたという事実があります。私自身、機械化、遠隔操作によって港湾労働者の作業が安全かつ楽になるのであれば誰も反対しない。しかし今は人手不足による機械化提案に聞こえてしまいます。これははっきりいって完全な合理化提案です。私は組合である以上いかなる理由であっても合理化提案には反対いたします。労働力不足という名の下で限られた13の港のコンテナターミナルだけ生き残ればそれでよしでは、港の集約化につながり、資本力のない中小企業は淘汰される結果となってしまいます。地域に根差した94の指定された港がどうなるのか、その辺の将来像も行政が示さなければ当然そこで働く労働者並びに企業が不安を抱くのは当たり前です。安心して働ける環境を担保させるようきちんと話し合いをしなければならない、そのことを真剣に考えなければならないのは労働組合以上に事業者団体、関係行政、国土交通省、厚生労働省であると私は考えております。

 最後に中央執行委員長に就任してまだ今年で1年終わるところです。1年生だから大目に見てくれというつもりもありませんが、やらなければならない課題は山積しています。取り組んできたこの1年の総括について、どうすればいいか、どうあるべきであったのか皆さんの率直な意見をお伺いしたい。私は決定したものは、当然のごとく直ちに実行したい。大会はその為の最高決定機関だからです。全国港湾は日本を代表する港湾産別であるがゆえに、難しい選択も迫られると思います。労働運動とは幹部のものではなく加入している組合員全体のものであると考えております。真摯に意見を聞くことと大衆迎合のごとく聞くことはまったく違うことと考えておりますが、私は若い人たちから定年近くあるいは再雇用の人たちが、すべての組合員が真摯に協議できる体制を目指して、港で働いてよかったと思ってもらえるような港湾産業を作り上げていきたい、どうか2日間活発な討議、真摯な協議をお願いし、全国港湾中央執行委員会としての挨拶とさせていただきます。宜しくお願い致します。

全国港湾労働組合連合会 中央執行委員長
真島 勝重